インピーダンス 

  アナログ回路を理解するために、インピーダンスという言葉を避けて通ることはできません。その意味を知ってしまえば大して難しいことではないのですが、曖昧な理解のままにアナログ回路に携わっていると、得体の知れず耳にするのも嫌だと感じてしまう人もいるようです。つまらないことで悩んでいるのはとてももったいないので、さっさと理解してしまいましょう。

  インピーダンスは、「抵抗」とほぼ同義です。ただし、次の2つの点が普通の抵抗とは異なります。1つ目は、抵抗に周波数依存を持たせているという点です。2つ目は、なぜか複素数が登場するという点です。この2つを順番にお話していきたいと思います。 

  インピーダンスが周波数に依存する抵抗だというのはどういうことかを説明する前に、次の3つの素子のインピーダンスを丸暗記していただきたいと思います。容量のインピーダンスは 1/jωC、コイル(インダクタ)のインピーダンスは jωL、そして抵抗器のインピーダンスは抵抗値をそのまま書いて R です。j は複素数で登場する虚数単位です。物理の分野では i を使いますが、それでは電流の記号と同じでややっこしいという理由で、工学の分野では j を使います。ω は普通の周波数 f と ω = 2π f という関係を持つ「角周波数」です。2π ( = 6.28 ) 倍だけ周波数と違う値になるだけで、意味はほとんど周波数と同じです。普通の抵抗は R で、周波数を示す ω が入ってきませんが、容量とインダクタには ω が含まれるため、周波数に依存します。

  抵抗値が周波数に依存するというのは、サイン波を容量とかインダクタに入れた時に、そのサイン波の持つ周波数によって抵抗値が変化する、ということです。まずはじめに、普通の抵抗の場合を考えましょう。R1 という値を持つ抵抗と R2 の抵抗を直列に接続して、R1 側の端を GND(0V)に、R2 側を 1 V の電源につないだとします。すると、2つの抵抗の間の電圧は単純に抵抗分割されて、1 V x R1 / ( R1 + R2 ) と計算されます。これは単純に V = I R の式を使って求まる結果です。1 V の電源に代わりに、振幅が ± 1 V のサイン波を入れた場合には、2つの抵抗の間の電圧は、振幅が ± 1 V x R1 / ( R1 + R2 ) に減衰したサイン波になります。

  ここで、R2 を容量 C に置き換えたとします。この時に、角周波数 ω、振幅 ± 1 V のサイン波を電源につなぐと、抵抗 R1 と容量 C の間の電圧は、R2 をそのまま 1/jωC に置き換えて、振幅が ± 1 V x R1 / ( R1 + 1/jωC) のサイン波になります。(少し不正確な表現ではありますが、大筋は間違っていません。後で詳しく説明します。)結果に ω が含まれていますので、周波数の大きさによって、振幅が 0.5 V だったり、0.1 V になったりと変化します。容量は周波数によって抵抗分割の割合が変わるのはやっかいではありますが、面倒なだけで特に難しい概念ではありません。インピーダンスという偉そうな言葉ではありますが、その実は所詮、容量とインダクタンスの抵抗値を表現したに過ぎないのです。

  しかしながら、複素数が入っているということが、理解を格段に難しくするようです。このことは、次のページでお話したいと思います。

 

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